第16章 椎名 ニキ / 美味しそうな人 ★
「えっと、あれ…? なんかよくわかんないっすけど、お姉さん美味しそうだなって…あれ?」
「ふふ、ケーキ屋さんだから、甘い匂いが染みついちゃってるからかな?」
「そう…なんすかね…?」
納得したような、納得していないような。
なんとも微妙な顔をした後、すぐにいつもの元気な笑顔に戻るのだった。
その数日後だった。
見知らぬ赤髪の男の子が血相を変えて家に来て。
ニキくんが倒れているところを見た時は頭が真っ白になって私まで倒れそうになった。
ニキくんの体質については知っていたけど、倒れているところを見たのは初めてだったから。
「大丈夫、ニキくんは絶対に助けるから。だから、大丈夫だからね」
それが、天城燐音くんとの初めての出会いだった。
- 現在 -
「ようオネーサン♪ 例のブツ、用意出来てっか~??」
「ちょっと燐音くん!! 物騒な言い方やめて欲しいっす!! HiMERUくんの誕生日ケーキってちゃんと言わなきゃダメっすよ!!」
「ふふ、こんにちは、ニキくん、燐音くん。こんな感じに作ってみたんだけど、どうかな?」
「おっ、さっすがオネーサン♪ 美味そうに出来てんじゃん♪」
「姐さん最高っす!!」
無事専門学校を卒業し念願のパティシエとなった私は、
今お父さんとお母さんと一緒に働いている。
ニキくんもあれからずっと成長して、特に料理やお菓子作りなんかはプロ顔負けの腕前となっちゃって、私も負けていられないと日々頑張っています。
「…にしても、てっきりニキがケーキ作んのかなって思ってたけどな」
「それもいいかなって思ったんすけど、HiMERUくんやこはくちゃんには絶対姐さんのケーキ食べて欲しかったんすよ。僕のケーキの原点で、僕のお気に入りっすから♪」
ニキくん…本当に大人になっちゃって…
こんなこと本人を前にしてもサラッと言っちゃうんだから…///
「ふぅ~ん??」
「な、なんすか…??」
「あらあらあらニキくん~! ちょっと新作の試食お願い出来ないかしら~♪」
「ちょ、ちょっとお母さん…」
「なはは、勿論良いっすよ~♪」