第16章 椎名 ニキ / 美味しそうな人 ★
~ 4年前 ~
「お姉さ~ん!!」
元気な声が後ろから聞こえてきて。
振り返ると、制服姿の椎名ニキくんが手を振りながら走って来ていた。
「こんにちは、ニキくん。学校帰り?」
「はいっす!! お姉さんも学校帰りっすか?」
「うん、今週はテスト週間だからいつもより早いんだ。…あ、そうだ! ニキくんクッキー持って帰らない? 昨日たくさん作り過ぎちゃって…」
「いいんすか!? やったー!! 嬉しいっす♪」
「ふふ、たくさん食べてね」
それからケーキ屋を営んでいる家に着くまで、ニキくんの学校の話などを聞きながら、楽しく歩いて行った。
「はぁ~…この甘い香り、最高っす…」
「あらニキくん、いらっしゃい」
「あ!お姉さんのお母さんこんにちは!!」
「あらあら、今日も元気ねぇ。ニキくん、新作のケーキなんだけど、試食してみない?」
「マジっすか!!試食したいっす!!!」
「お母さん…(笑)」
ニキくんはいつも元気で明るくて、我が家のアイドルなのです(笑)
「…ごめんね、お母さんに遅くまで付き合わせちゃって」
ニキくんは天才料理人である椎名さんのお子さんだから、
試食した時のコメントやアドバイスが的確で。
それを参考に改良したスイーツの売れ行きが良いものだから、新作を作る時は度々ニキくんに試食してもらうのです。
…なんだかとても申し訳なく思えてきて…
「全然っすよ~! 僕も新作スイーツたくさん食べれて最高っす!! それに、お姉さん達のお役に立てたなら嬉しいっすから♪」
ニキくん…本当にいい子だなぁ。
「あ、あとこれ…お母さん程上手じゃないけど…、良かったら持って行って? さっき話してたクッキーなんだけど…」
「わーい♪ 僕、お姉さんのクッキー大好きなんで♪」
「そう言ってくれて嬉しいな、でもやっぱり自分ではまだ納得いかなくて…。待っててね、そのうちお父さんやお母さんより凄いパティシエになるから!! もっと美味しいクッキー作るから、また貰ってね?」
そう言って、クッキーを差し出した。
するとニキくんは、じっとこちらを見つめて。
「……お姉さん…美味しそうっすね…」
「…へ?」