第14章 天城 燐音 / 天城 燐音はキスをしない
ー ES内、とある一室 -
「さぁ聖子さん、天城にどんな酷い事をされたのです? 遠慮なく話して下さいね」
「えっと…」
「モラハラですか? それとも金銭トラブル…。まさか聖子さんにまで手を上げたという事は…」
「へ…」
「同意もなく無理矢理関係を持とうとしたとすると、いくら恋人関係とはいえ…」
「えぇぇぇ違…っ違いますよ!!!?? むしろ逆で…」
「逆…?」
これ以上燐音さんが犯罪者の疑いを掛けられる前に、観念して白状する事にした。
1年付き合っていても、未だキスをして貰えない。
自分からしようとしてもスルーされてしまう、という話を。
そして、それが寂しい、という事を。
「…成程。そういう事でしたか」
「…私に女としての魅力が無いからでしょうか…。それとも、もう私の事なんて…」
「そんな事は無い、とHiMERUは思いますよ。あなたはとても魅力的な女性ですし、天城もあなたの事を大切にしているように見えます」
「…でも……」
HiMERUさんがそう言ってくれているのに、不安ばかりが募ってしまって。
そんな時に
ピロリン♪ と携帯が鳴った。
ニキくんからのLINEで、レッスン室に来て欲しいとの事。
「レッスン室…? 今日は確かオフだったハズ…」
「…行って来ては如何ですか?」
「そう、ですね…、すみません、ちょっと行って来ます!」
「はい、行ってらっしゃい」
私は急いでレッスン室に向かった。
「…さて、俺も行くか」
HiMERUはゆっくりと席を立って、部屋を出た。