第14章 天城 燐音 / 天城 燐音はキスをしない
ー crazy:B の溜まり場、喫茶 シナモン -
「いらっしゃいませ~♪ …って、あれ? こはくくんと…」
「あぁ、ええトコにおってくれたわ。ちょっとこの鬱陶しいデカブツ、引き取ってくれんか?」
「…いや、いらねっす」
「せやろなぁ…わしもいらんし、どないしよ思って」
溜息をつくこはくの後ろで、無言で立ち尽くす天城燐音。
ずっと俯いているので表情は読み取れないが、酷く落ち込んでいるように見えた。
「…えっと…、燐音くん? 一体どうしたんすか?」
「………」
「こんな感じで、何を聞いても黙っとんねん。いい加減鬱陶しくなってもうてな。ニキはんなら燐音はんの扱いにも慣れてるやろし…って思って引っ張って来てん」
「えぇ~…そう言われても…。ま、取り敢えず席まで移動するっす。ここにいると他のお客さんにマジで迷惑なんで♪」
席に着いてアレコレ聞いてみても、状況は変わらず。
そこでこはくは、一旦HiMERUにも連絡してみる、と席を外した。
「…ほんとにどうしちゃったんすか燐音くん、まるで僕と初めて会った時みたいな顔してますけど」
「…そう、だな…。あの時と同じだ……」
「んい?」
「俺は…大切な人を傷つけて、泣かせて…でもどうしたら良いのか、分からなくて…逃げ出した……」
「大切な人って…聖子さんっすよね?」
「……あぁ……」
本当に、どうしたら良いのか分からなくて…
アイツの泣き顔は何度も見て来た。
嬉し泣きってやつも、ドラマみてボロボロ泣いてるのも。
仕事が上手くいかずに、悔しくて泣いてるのも。
でも、さっきのアレは、見た事のない顔だった。
あんな風に泣いてるのを、初めて見た。
しかも、俺のせいで…
俺が…聖子を泣かせた……
「俺には…アイツの傍にいる資格なんて………っ痛ってェ!?? ニキ、てめ…!!」
「はーーーーーー。ほんっと、燐音くんってたまに馬鹿っすよね」
「あ”ぁ”!?」
「ほら、行くっすよ」
「は? お、おい行くって何処へ…」
「そんなの決まってるっすよ、ね、こはくくん」
「せやな。わしでも分かるわ」
「お、おい…ちょ…」
両腕をニキとこはくに拘束されて
燐音は連行された。