第9章 最終章 晴れの帰り道
翌々日。
光里は圭祐の病室へ車を走らせていた。
昨日、すぐにでも圭祐の無事を確かめたかったがバイトで行けなかった。
(でも、よく考えるとその方が都合がいい)
2人で話がしたかった。ゆっくりと。
病院の駐車場に車を停める。
すると、見たことのあるようなシルエットを見つけた。
(萩原さんだ)
帰る所であろうか。病院の玄関から出てきたところだった。
あちらもすぐに光里を見つける。
こちらに近づいてきたので、会釈をすると話しかけてきた。
「こんにちは、お姉さん。」
「こんにちは、萩原さん。」
「お見舞い、来てたんですね。」
「うん、心配だったから。」
なんだか敵意を向けてくる萩原に少し気後れしてしまう。
そんな気持ちを外に出さないよう、懸命に取り繕った。
「聞きましたよ。お姉さん、圭祐先輩にフラれたそうじゃないですか。」
「っ」
フラれた。そう捉えられてもおかしくない。
髪飾りの件は綾奈しかしらないし、詳しいことは綾奈、吉川、多田しか知らないので
それを除いて上部だけ聴くとたしかに光里が圭祐にフラれたようだった。
一瞬怯んだ光里を見て萩原は勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「なのに、まだ来てるんですか?確かハタチ超えたんですよね?そういうの、ストーカーっていうんですよ?」
一方的な言い分に固まってしまう。
言い返したい気持ちをグッと堪える。
(ここで言い返したら負けだ。そうしたら、和泉君に私がどんなに酷い女か言いつける気だ。
堪えろ。私は、、大人なんだから。)
「そうだね。でも、お見舞いに来てくれたら喜びますよ、って言ってもらえたし、
あの後も髪飾りとか貰えたから、嫌われては、ないかな、って」
段々と声が小さくなった。
ふっ、と鼻で笑ってから萩原は言った。
「必死ですね。まぁ、精々頑張ってください?」
そう言って、優雅に横を通り過ぎて行った。
なんだか泣きそう。
悲しくてじゃない、悔しくて。
(っ、うじうじしてても始まんない。行こう。)
決意は、先程よりも何倍も硬かった。皮肉にも、萩原のお陰で。