第9章 最終章 晴れの帰り道
「実はーー」
やめて。尋ねておいてなんだが、聴きたくない気持ちが出てくる。
聴きたくない。でも、聴かなきゃ。
和泉君は、どうなったの?
「和泉さんがーー」
ぎゅっと目を瞑る。
心の中で懸命に祈る。
「ーーお目覚めになりました。」
「えっ!?」
予測もしていなかった自体に間抜けな声が飛び出る。
「おめでとうございます。ずっとお見舞いに来ていた甲斐がありましたね。
今は医師が診察に行っているので会えません。もしかしたら今日いっぱいは会えないかもしれません。
ですが、遅くても明日からは会えますよ。」
にこやかに話してくれる看護婦さんに、徐々に理解が追いついてくる。
「和泉君、助かって、、、あぁ、良かった、、、!」
笑いたいのか泣きたいのかよくわからなくなる。
なんだか嬉しいのに泣きそう。
「ありがとうございます、ありがとうございます!」
気の済むまでお礼の言葉を述べる。
そんな光里を看護婦は嬉しそうに見守っていた。
光里は病院のロビーの椅子に座っている。
あれから一時間たち、流石に何もしていない状態に飽きてきて、小説を読み始めた。
内容は全く頭に入ってこない。
そのせいか、さっきまで寝ていた主人公がいつのまにか彼氏とデートが終わっている。
(どうしよう、目が覚めたって!)
一時間たっても興奮が収まりきらない。
一緒に何をしようかをずっと考えている。
一緒に遊びに行きたい。
一緒に美味しいものを食べたい。
一緒に話がしたい。
一緒にいたい。
だから。
(告白しよう。今度こそ。)
病気が治った今、圭祐が光里に距離を置く理由はない。
玉砕しても構わない。
そう覚悟を決めたものの、その日は面会終了時間までに診察が終わらず、3時間まったものの渋々帰った。