• テキストサイズ

雨の帰り道

第9章 最終章 晴れの帰り道


エレベーターを降り、圭祐の病室の前まで行く。
ドアを開けるのが怖い。
気持ちを伝えた時、圭祐にどんな反応をされるのか。

ストーカーと言う萩原の声が脳裏に焼き付いている。
(返事を、もらえばいいだけ。そうして、ストーカーじゃなくなるか、もう会わなくなるかが決まるから。)

深呼吸をして、ノックをする。
どうぞ、と軽い返事が返ってくる。
きっと「今度は誰だろう?」位に思ってるんだろう。

ガラガラガラ、とドアをゆっくりと開ける。
目が合った瞬間に、目を見開いて驚く圭祐の姿が目にはいった。

「的羽、さん、、、。」
「久しぶり、和泉君。」
微妙な空気が流れる。
(何か、喋らなきゃ。)

「座っていい?」
「どうぞ。」
ベッドの横の椅子に腰掛ける。

「ありがとうございます、わざわざ来てくださったんですね。」
「うん。」

会話を探す。無言でいると、あの言葉を思い出す。
案外ダメージを受けていたようだ。

「思ってたより、元気そうで安心した。体調はどう?」
「ちょっとだるいです。でも、夏休み中程悪くないんです。夏休み中は毎日ほんと辛かったですから。」
少し笑いながら話す。安心させようとしているのが伝わってくる。

「ごめんね。もう会わないって言われてたのに。」
「い、いえ!そんな、、、。すみませんでした。急に。多田くんに聴きました。毎日来てくださったそうですね。」
「、、、重かった?」
「そんなことないです。嬉しかったですよ。」
なんだか距離感が違った。当たり前だが。

「私ね、誕生日迎えたの。」
「え!?」
「もう二十歳だよ〜。」
みるみる申し訳なさそうな表情になる。

「すみません、僕祝っていただいたのに。l
的羽さんの誕生日祝いたかったなぁ、と心底残念そうなつぶやきが聞こえる。

「いつだったんですか?」
「昨日。」
圭祐は少しホッとしたような表情を浮かべて微笑み、
「おめでとうございます。誕生日、祝えてよかった。」
と言った。

なんでこの子はこんなに優しいんだろう。
久しぶりなのに、こんなにも愛おしい。

「あの、和泉君、、、。」
「はい」

今しかない、と思った。

「私と、付き合ってください。」
/ 59ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp