第9章 最終章 晴れの帰り道
ガラララララ
圭祐が倒れて4ヶ月。
昨日は光里の20歳の誕生日。
いつもとさして変わらない日。
親からは電話でおめでとうって言ってもらえて、沢山の林檎やら梨やらジャガイモやら人参やらが送られてきた。
だから、今は帰れないけどもう少ししたら遊びに行くね、と返した。
綾奈には大学でおめでとうって言ってもらった。
あげる!と可愛く手渡されたものはブランケットだった。
光里は自分に無頓着すぎるんだよ、って。
寒くなるから、車の中とかで身体冷やさないようにね、って。
吉川にはバイトに行った時おめでとうって言ってもらった。
今度酒のみに行こうな、って。
手渡されたのはやっぱりコーヒーだった。
でも、缶じゃなくてお店でちゃんと買ったやつ。
ここまでしてもらって、光里は幸せだった。
家族にも、友達にも、先輩にも恵まれ、それでもこれ以上望むのはーー
愛しい、愛しいあの人だった。
おめでとうございます、って可愛らしく笑ってくれる、あの人が隣にいなかった。
家から車で約20分の病院に毎日お見舞いに行くのも、光里にとってはもう当たり前だ。
診察に来てるおばあちゃんとだって顔見知り。
こんにちは、なんて挨拶を交わしていつも通り圭祐の病室へ向かう。
いつも通りの日々じゃ無くなったのは、病室がある3階についた時。
バタバタと忙しい足音がしている。
(何かあったのかな?)
と光里が首を傾げたとき。
「#NAM6##さんが〜」
と、ざわめきに混じって彼の名前が聞こえた。
(和泉君!?)
瞬間的に光里の頭は真っ白になる。
《最悪の場合、死に至る》
前に聞いた病状が思い出され、最悪のパターンが脳裏をよぎった。
(まさか、、、!)
「あの、和泉さんの親族です!なにかあったんですか!?」
光里は考えなしに、咄嗟に親族と偽っていた。
毎日来ているのだから光里が親族じゃない事はもう知っている筈だが、看護婦は特に咎めなかった。
心臓がバクバクとうるさい。
もう秋も深まってきたのに汗が出てきて体が熱い。
「和泉さんを毎日お見舞いに来られた方ですよね。」
そう看護婦は前置きして告げた。