第8章 緊急呼び出し
男子高校生は、今初めて光里の存在に気がついたようだった。
「あれ、圭祐と仲良しのおねーさん。」
急に圭祐の名前が出て、びっくりしたように光里は顔をあげた。
祐斗ばかり見ていて気づかなかったが、その子は確かに圭祐と仲よかった子、
名前はたしか、多田くんだった。
「圭祐君のお友達!」
「そうっす。多田です。」
「あの、圭祐君、元気?」
そう問うと、
「それが、あいつ急に部活やめたんですよ。」
「え?」
「いや、いつのまにか?1週間くらい前だったかな。急に。」
(1週間前ーーたしか、デートに誘った日、つまり最後に食事をした日がそれくらい。ってことは、あのくらいにはやめてた?)
「なんで?」
「いや、わかんないですけど。すんません。」
「いや、こちらこそごめんね。」
「なんかあったんすか?圭祐と。」
“多田君とはよく話をするんです、的羽さんの話も。”
いつか、そう言っていた気がする。という事は、私達のこの関係も知っているかな?
「さ、最近ご飯食べに来なくて。さよならって言われて。」
「じゃあ、何かあったのかもですね。」
この展開は予想外だったのか綾奈もなにか考え込んでいる。
その中、祐斗だけが状況についていけずにぽかんとしていた。
「ほーら、もう練習に戻りなさい!」
たまたま通りかかったのか、遅いので様子を見にきたのか顧問らしき先生が呼びかけていた。
「あ、はい!もう行きます!とりあえず、メアド教えてください。なんかあったら連絡します。」
「う、うん。」
アドレス交換を終えると2人はバタバタと過ぎ去って行った。
(部活やめた?)
頭の混乱は増すばかりだった。