第7章 哀しみと踏み出し
翌日。
(あーあ、まさかいないなんてなぁ。)
大学へ行くと、今日は綾奈はいなかった。
前日に連絡しておこうと思っていたのだが、昨日はいつのまにか眠っていたようだ。
「どうしたの?最近ため息ばっかだね。」
光里のバイト先の先輩である吉川が声をかけてくれる。
「吉川さん、、、。ありがとうございます。なんでもないですよ、大丈夫です。」
『大丈夫、は禁止です。』
「っ、、、」
『的羽さんは大丈夫って言いすぎです。そんなにいつも大丈夫なわけないじゃないですか。
大丈夫じゃなくても大丈夫、って言っちゃうの僕知ってるんですよ。』
不意に圭祐の言葉が思い出される。
昨日割り切ろうと決めたばかりなのに。
突如唇を噛み締め、泣かないよう我慢する光里を見て吉川は焦って聞いた。
「ちょ、本当に何があったん?大丈夫?じゃ、ないか。なんかあるなら聞くよ?」
「吉川さぁん、、、。」
吉川の声がとても優しくて、泣いてしまいそうになるのを堪えて光里は話した。
「実は、好きな子がいるんです。」
全て話終わるまで、支離滅裂な文章だったのに吉川は真摯に聴いてくれた。
話終わる頃には随分と楽になっていた。
「そっか。好きな子に急に、わけもわからず別れを告げられたら辛いよな。すげーわかるわ。」
「吉川さんにもそんな経験が?」
「んんー、まぁね。遠い昔の話。」
吉川も苦労しているんだな、と光里は思った。
それでも、こんなに優しくいられる吉川は強いと思う。
「すごいですね、吉川さんは。」
「え、俺ー?そうでもないよ。」
「苦労してるのに、他人にも優しくできて。ほんと尊敬します。私なんか、自分のことで手一杯だから。」
「光里ちゃん、、、。あのさ。」
「はい、なんでしょう?」
続く言葉に、また光里は驚かさせられることになった。
「俺と付き合わない?」