第4章 誕生日
7月8日。光里はドアの前で控えていて、
圭祐がインターホンを押すなりドアを開けた。
「ハッピーバースデー、和泉君!」
「わ、的羽さん!」
「へへへ、驚いた?」
「はい。びっくりしました!」
「どーぞ。いつもと変わらないご飯だけど、ごめんね。」
「大丈夫です!ありがとうございます。」
(本当かな。)
「美味しいですよ。ありがとうございます。」
そう言って笑う圭祐が光里は大好きだ。
だから、絶対。振り向かせる。
「あのさ、和泉君。」
「なんですか?」
「誕生日おめでとう。」
光里が手渡したものは楽器の手入れに使うスワブという布だった。
演奏中の圭祐はすごくかっこよかったから。
高校生が買わなそうな少し高めの物を選んだ。
「え、良いんですか?ありがとうございます!」
「どういたしまして。」
圭祐はとても気に入った様子でスワブを眺めている。
正直、ここまで気に入ってもらえるとは思っていなかった。
それどころか渡す直前まですごく不安だった。
(やっぱり、綾に相談して良かった。)
「気に入ってもらえて何よりだよ。」
「本当にありがとうございます。一生大切にします!」
「大げさだよ。気に入ってもらえて私も嬉しい。」