第1章 雨の日
リビングで仔犬に手当てをしている間、男性はずっと玄関に立って居た。
手当が終わり、玄関に出て行きながら光里は男性に声をかけた。
「もう大丈夫だと思う。」
すると、男性の顔がぱっと明るくなった。
「良かった。あ!」
男性が急に大声をだしたので、光里は驚いた。
「あの、すみません。女性の部屋に入るなんて。」
(ああ、そのことか。案外律儀だなぁ。律儀っていうか、純粋?
雨の日に仔犬拾ってるくらいだから、そりゃそうか。)
「ううん、こちらこそごめんね。保護者の方が心配してるでしょ。」
「いえ、、、。大丈夫です。」
「きっと心配してるよ。ごめんね。」
と光里が再度あやまると男性は
「大丈夫です。母は他界していますし、父は海外に居るので。」
と言った。
(うわ、聞いちゃいけない事だったな。)
「ご、ごめん、、、、。」
「謝らないでください!大丈夫ですから。あ、僕帰ります!すみませんでした、さようなら。」
「待って!」
帰ろうとした男性を光里はとっさに引き留めてしまった。
(えっと、どうしよう。特に用はないんだけど。あ!)
「ごはん!仔犬の話を君に聞きたいから、夕飯を一緒にたべませんか?」