第3章 コンクール
「はい。一緒にご飯食べたいなって。」
「うん!食べよ。お祝いに外食する?なんか作ろうか?」
「的羽さんのご迷惑でなければ、的羽さんの料理が食べたいです。」
「いいよ。何食べようか。お祝いに豪華なもの食べようね。」
「やった!ありがとうございます。何がいいかなぁ。」
「お肉焼く?ステーキ。すき焼きって2人じゃ多いもんね。」
「良いんですか?牛ですか?豚ですか?」
「奮発して牛肉買おうかな。」
「流石に今日は払います!」
「良いの良いの。払わせてよ。年上だし。」
仲睦まじい2人を萩原が見ている。
その瞳は、”私の方が先輩と仲良いから“と言いたげだった。
悲しげなその顔は“先輩、離れていかないで”と訴えているようにも見えた。
「萩原、どうした?」
「あ、多田先輩、、、。」
さっきの男子生徒だった。
「なんでもないです。」
「そっか。」
多田は言い聞かせるように萩原に言った。
「お節介だとは思うけど、圭祐は、好きな奴いるぞ?」
「え?あ、別に圭祐先輩好きじゃないですよ〜。」
「なら良いけど。もしそうなら、お前みたいな努力家の後輩が傷つくのは黙って見てらんないってだけ。
余計なこと言っちゃってごめんな。」
「いえ。大丈夫です。」
それだけ言うと多田は去って行った。
「そんなの、わかってるよ、、、。」
萩原の呟きは誰にも聞こえる事は無かった。