第3章 コンクール
圭祐は光里を気遣ってか会話をやめたそうだけど
断れないような戸惑いを見せていた。
(別に気にしなくていいのに。)
光里は若干拗ね初めているのを自覚し、ふと我に返った。
(拗ねてる?なんで?)
理由はよくわからなかった。
それから10分ほど話し、萩原は帰った。
「さようなら、先輩!また明日。」
「うん。また明日。気をつけて帰って。」
萩原が圭祐に気遣われているのがなんだか面白くない。
”また明日“というのもなんとなく嫌だ。
「的羽さん、ごめんなさい、待たせちゃって。」
「別に。あの子と帰れば?」
言ってからしまった、と思った。光里の機嫌が悪いのは光里の勝手であり、
圭祐は何も悪くない。不機嫌を表に出す気は無かったのだ。
(怒ったかな?)
「ごめん。」
「いえ、こちらこそ待たせちゃってすみませんでした。」
「仲良いね。さっきの子。はぎわらさんだっけ?」
「あ、はい。一生懸命でとてもいい子なんです。」
「、、、そっか。」
嫌なのを表に出さないよう懸命に努力する。
「おーい、圭祐!打ち上げ行く?」
男子生徒が大声で圭祐を呼んでいた。
「あ、呼んでるよ。行ってくれば?私は大丈夫だから。」
「え、でも、、。打ち上げじゃなくて、」
「行かないの?」
「一緒に、ご飯食べませんか?」
”一緒にご飯食べませんか?“その一言でさっきまでのイライラが全て吹き飛んだ。
光里はめいっぱい嬉しそうな顔で
「いいの?」
と聞いた。