第3章 コンクール
「先輩〜。」
女子生徒は肩より少し上くらいのふわっとしたボブカットの可愛い子だった。
「先輩、お疲れ様です。銀賞とれてよかったですね。」
吹奏楽部なのだろう。圭祐とも仲が良さそうだった。
何故だか光里は面白くない。姉離れする弟を見ている気分なんだろう、と勝手に納得した。
「あ、先輩のお姉さんですか?」
「いや。この人は僕がとてもお世話になっている人だよ。」
「へぇ〜。」
女子生徒は値踏みするように光里を見つめた。
「圭祐先輩の後輩の、萩原です。よろしくお願いします。」
「よろしくね。」
そう返したものの、心の中は落ち着かなかった。
(名前呼び!?下の名前?いや、たしかにおんなじ部活で半年くらいやってるあなたと
知り合って2週間ちょっとの私じゃ全然違うけど。)
それからも2人は、2人にしかわからない話題で盛り上がっている。
今日の演奏はどのパートがどうの、どの先輩が盛り上がってだの。
光里は帰って良いのか分からず手持ち無沙汰になる。
(なんか、やだな。)
どうしてだかはわからないけれど、すごく嫌な気分になった。