第3章 皆が頑張るWhiteDay
〈 時環 雪臣 side episode 〉
あれから雪臣は、ずーっと同じ店の店内を
うろちょろと行き来し、
どれがいいものかと頭を悩ませていた。
(......だめだ...
さっぱり分からない...。)
める自身のこともよく知らなければ、
それ以前に、女性にプレゼントを送ったことすらほとんどない。
お家柄、しょうがなくどこぞのご令嬢に
物を贈ったことはあった気もするが、
それも使用人に選ばせていたし、
なにより心の底からどうでもよく
その時自分の起こした行動すら覚えていない。
(......癪だけど...
今この時ばっかりは、
女性に詳しい凌のことが羨ましいかも...)
そんなことを考えていると
横のカップルらしき2人の会話が聞こえてきて、
なんとなくそちらに目をうつす。
「ねーねー、これ可愛い!」
「んー?これ?」
「そうそう!あ、見て...!
これ、こうやって合わせると、
ハート型になるんだって!」
「へー!すごいじゃん!
......ふーん、
ペアのネックレスか...
いいじゃん、買ってやるから2人でつけよ!」
「え!いいの!?ありがとう...!」
2人は仲睦まじげにそのネックレスをもって
お会計に向かっていく。
『......ペアのネックレス...か...』
雪臣は2人が手に取っていたものが置いてあった、
ペアネックレスの商品棚に目をむける。
(......もしこれを渡したら...
めるさんは、これを見る度に
俺のことを思い出してくれるのかな......)
そんなことを考えながら、
無意識にペアネックレスを手に取る。
すると、すぐにはっと我に返り
雪臣はぶんぶんと首を振った。
『......俺はなにを考えてるの...。
......こんなの俺に渡されたら...
絶対に気持ちわるい...』
溜め息をつきながらネックレスを戻そうとするとー...
「彼女さん、ウブな方なんですか?」
『......えっ!』
また店員さんに声を掛けられ、
ビクリと身体を震わせた。