第8章 I am a girl
くるみはその言葉に目を瞑ると
うーん…とうなった。
その仕草が、キスをねだってるのかと、一瞬勘違いして頬が熱くなる。
『でも、熱はなさそうだよ?』
くるみが目を開き、俺を見あげた。
近すぎてくるみの瞳の色がよく見えねぇけど、
それでもやっぱり綺麗だと思う。
『いつから体調悪い?』
そう聞かれても、はっきりとした日にちがわからない、
突発的にやってくる胸の痛みに記憶を張り巡らせるが、多分高校に入ってからだろう。
「いつから…だろうな、時々突然心臓がズキズキしたり
呼吸が苦しくなる…」
俺は胸元を掴み、顔をしかめた。
『え…!ヤバそうなやつだよ、それ!
病院いった方がいいって!』
「やっぱり、くるみもそう思うか?」
『うん、思う
戦うのに支障はないの?』
「戦ってる時は平気だ……」
そっか、とくるみは安堵して
『でも、あんまり無理はしないでね』と念を押した。
心配されるのなんて久しぶりで、つい喜んでしまう自分がいる。
『つぎ…爆豪くんとだね』
「そうだな」
『あ!さっきね…爆豪くんに…』
と、そこまで言ったところで、コンコンとドアを叩く音が聞こえた。
「失礼するよ。そろそろ出番だから
これ、着替えのジャージね」
入って来たのはセメントス先生で、轟はジャージを受け取る。
『着替えるよね、じゃあ、客席戻ろうかなっ』
「あぁ…」
くるみを引き止めたいと一瞬思ったが、着替えねぇといけねぇし、伸ばしかけたその手を引っ込めた。
そういえば、くるみが何か言おうとしてたな…
爆豪がなんとか……
まぁ、後で聞けばいいかと、ジャージのジッパーを下ろした。