第8章 I am a girl
到着した控え室の前でくるみは首を傾げる。
目の前には控え室1と2があるが、どちらが轟のいる部屋か分からない。
スマホを取り出して、聞こうと思ったところで
控え室2が空いて、くるみはその方に顔を上げた。
「あ?」
『ば…爆豪くん…!』
控え室2から出てきたのは爆豪で、くるみは目をパチクリさせて突然現れた想い人に頬を赤らめる。
「ンでここに居んだよ…」
『あ……えっと、轟くんに呼ばれて…』
正直に言うと、爆豪はズカズカとくるみに歩み寄り
ダン!と壁に押しやった。
『ひっ!』
あまりの至近距離に、紅い瞳に見つめられくるみは思わず顔を背ける。
「お前…まだ、ほかのアルファに媚び売ってんのか」
『や…轟くんは、そういうんじゃなくて…』
「テメェは誰が好きなんだ?あぁ!?」
『っ……//////
そ、そんなの…
爆豪くんに…決まってる…』
くるみは真っ赤な顔を俯き隠しながら、どうにか言葉を絞り出す。
「なら…」
『でも!轟くんはお友達なの…!』
くるみは精一杯爆豪を見上げると、潤んだ瞳でその紅目を見つめる。
爆豪は、近距離で香るオメガのフェロモンにくらっと目眩がした。
(っ……抑制剤…飲んでこれか…)
爆豪の周りのオメガは緑谷だけだ。
男のオメガは例え発情していても、男相手にはフェロモンが通じない。
女のオメガと初めての対面となる爆豪からすれば、そのフェロモンの誘惑は、例え抑制剤を飲んでいても、計り知れない。