第8章 I am a girl
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
結果からいえば、轟と緑谷は僅差で、だが轟の勝利に終わった。
後半、轟が見せた炎の個性。
そのせいで、極限まで冷えていた空気が熱され、大きな爆発を生んだ。
その、激しい爆発により会場は損壊…
トーナメントは一旦休戦することとなる。
『轟くん…火使ってた…』
「あー、確かに。温存してたのかな?」
エミリの問いかけに、くるみは『うん…どうだろ?』と静かにつぶやく。
使わないと言っていたはずの火の個性…、どんな心情の変化があったのか、誰にも問えないまま、くるみは、むぅ…と唸った。
と、そこにスマホの着信音が響いて、くるみは焦りながらポケットからスマホを取り出す。
『え……轟くん…?』
画面を見て思わず言葉を漏らすくるみ
その声に反応したエミリとレイナが顔を寄せ、画面を覗き込み
「やっば!!!!!!!!!!」
「なにそれ!キャーーーーー!」
くるみの手から携帯を奪い取って、今来たメッセージを凝視した。
【会いたい】
その文字をくるみは手で隠したが、時すでに遅く
なぜかくるみより悶える二人の間で、
くるみは顔を真っ赤にして立ち上がった。
『もう!見ないでよ!』
「【会いたい】だってー♡」
「いいなー、あんなイケメンに言われてみたーい♡」
まだはしゃぐ二人にくるみは頬を膨らませた。
ひとしきりキャッキャと楽しんだ後、エミリは両手を合わせて「ゴメンゴメン」と言い
「いいから、会ってあげなよー。きっと待ってるよ?」
とくるみの背中を押す。
『うん…行ってくる』
くるみはぬいぐるみをレイナに渡して階段を駆け上がり
トーナメント待合室まで小走りに向かった。
そんな彼女の背中を、レイナとエミリは見つめながらニヤニヤと顔を合わせた。