第8章 I am a girl
くるみは口元をぬいぐるみで隠したまま、上目遣いに爆豪を見つめる。
爆豪は視線を晒したまま耳元を赤く染めていた。
『……好きにしていいの?
しつこく話掛けちゃうし…
周りウロチョロするよ?いいの?』
「……勝手にしろ」
爆豪は掴んでいたくるみの手を離すと、ズカズカと客席に向かって去っていった。
一人廊下に残されたくるみは、ボスン!とぬいぐるみに顔を埋める。
そしてひとしきり悶絶した後、その場でピョンピョン跳ね回った。
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スキップしながら自分の席に戻ると、
くるみの帰りを待っていたエミリとレイナに飛びついた。
「わ!遅かったね!爆豪さんの試合終わったよ?」
「ぬいぐるみ綺麗になってよかったねー
…ってか、なに?
なんでそんなにニヤニヤしてるの?」
くるみは全く締まりのない顔で
『え〜〜〜〜♡へへへぇ♡』
とニヤけた後、ぬいぐるみを抱きしめてクスクス笑った。
足はブラブラと小さく振ってゴキゲンを全身で表している。
そんなくるみをエミリとレイナは奇妙そうに見つめたが、どうせ爆豪がらみのことだろうと、スタジアムに目を向ける。
しばらくは1人でクスクス思い出し笑いをしていたくるみだったが
轟がスタジアム内に現れた途端、ニヤけるのをやめて、きちんと席に座り直した。
『轟くん…頑張って…』
そう呟くくるみの声が聞こえたかのように、
轟はくるみの方を見つめると
小さく頷いた。