第8章 I am a girl
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女があまりによそよそしく去ろうとするから、腕を掴んで引きとめた。
「……」
こいつ、んでこんなにビビッとんだ。
今の所、俺は怒鳴ってもないし、暴言も吐いてない。
カエルのやつにいっつも怒鳴ってるって言われたから、わざわざ気をつけてやってんだ。
…ってのに、こいつは
『…あの…ごめん、大事な時に…目障りだよね…
でも、その…ワザとじゃなくて……』
と、今にも泣きそうになりながら、片手でぬいぐるみをぎゅうっと握りしめる。
「あ゛?何テメェ謝っとんだ」
『へぇ?』
くるみは目をパチクリさせて俺を見上げた。
俺はこいつの腕を掴んだまま、見下ろしがちに睨みつける。
こいつがビビる理由も、謝っとる理由もまるでわかんねぇ。
『だって…、え…?
「近寄るな」って、爆豪くんに言われたし…』
あ?何言ってんだこいつ。
いつの話してんだ…
あれか、家送ってった時のか?
つかそんなの律儀に守ってんじゃねぇよカス、真面目かよ。
「俺に言われたからって、言う通りにすんのか」
『だ、だって…』
「テメェはさっきから、だってだってって……テメェの意思はどうなんだよ!
一回フラれたくれぇで諦めんのかテメェは!
テメェの気持ちは、そんなもんなんか!」
いい加減腹が立ってきて、手から小さな爆破が起きた。
腹立ってもしかたねぇだろ
こっちがここまで言ってやってるってのに、この女は首を傾げて
『えぇ?』
なんて間抜けな声を出してやがる。
くるみは少しの間、あーとか、うーとかうなった後、上目遣いにこちらを見ると
『え…あの、それって……
諦めないでいいって…こと?』
消え入りそうな声でそう聞いて来た。
「っ……///////
んな事言わせんな!カス!モブ!クソオメガが!」
『ええー!!!!!』
くるみは顔を真っ赤にして叫んだが、
俺が「ウッセェ!」と言うと、ぬいぐるみで口元を塞ぐ。