第7章 I am having fun
くるみはまだ湿っているぬいぐるみを両腕で抱きしめていたのだが、トーナメント出入口から現れた爆豪を見るなり
その腕の力を強めた。
一心にその姿を見つめる彼女の横顔はウットリとしていて
「ホント、好きなんだな…爆豪のこと」
上鳴がそっと話しかけるとくるみは眉を八の字に下げて笑った。
「なんであんな悪人面がいいんだ?
性格も含め、なかなかに特殊な好みだと思うけど」
『…んー
なんでだろう…でも、ほら…』
上鳴の問いかけにくるみは細い指を爆豪に向ける。
『カタギの顔じゃないよね
あーいう表情見るとゾクゾクするの……
胸がドキドキってして…目が離せなくなるんだよね』
変かな?と首を傾げるくるみに、
「変だろー」と返したのは上鳴の隣の席に座る瀬呂。
「でもさ、ぶっちゃけ轟とはどういう関係?
さっきトーナメントの後、轟ん所来てたよね?」
すれ違った瀬呂が、くるみにコソッと問いかけた。
「爆豪には言わねぇからさ、
ぶっちゃけ、アルファのつがい狙い?」
『いや…轟くんとは、なんていうか…お友達なんです。
爆豪くんにフラれたの見られちゃって…それから相談乗ってもらってて』
「あ、そーなんだ。ごめん、変なこと聞いた」
『ううん、大丈夫です。
オメガなら、アルファを求めて当然なんで…
でも、たぶん爆豪くんは…ベータでもオメガでも、好きになってたと思うんです。
爆豪くん、アルファだし、説得力ありませんけどね』
照れくさそうに笑うくるみに、瀬呂は「そっか、爆豪は幸せもんだな」と微笑んだ。