第7章 I am having fun
トーナメント会場に足を踏み入れると、向かい合わせに瀬呂が立っている。
両腕をストレッチしながら笑う男は現状ここに立てていることに興奮を覚えているようだった。
《強い…!強いはずなのにその拭いきれない地味さはなんだァ!?
ヒーロー科、瀬呂範太ーーー!
予選2位1位って強すぎだろーキミィ!
推薦入学者の実力はダテじゃねぇってか!!
ヒーロー科、轟焦凍ー!》
トーナメント第二試合、試合スタートの掛け声が響く。
沸き立つ歓声に、瀬呂範太は首の骨を鳴らした。
「まー正直…勝てる気はしてねぇけど
でも、負ける気もねぇ!!」
開始同時に両腕から伸ばしたテープで轟を拘束する
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瀬呂範太 個性(テープ)
両肘がテープのロールに似た形に変形しており、
そこからセロハンテープ的なものを射出できる。
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場外狙いの、先手必勝だ。
『轟くん!!!!!』
思わず、くるみは叫んだが
赤と白の髪の隙間から、覗いた瞳の冷たさ
「わりぃな…」
そう唇が呟いたと同時
会場を突き出るほどの氷柱がいくつも。
観客席を覆いかぶさるほどの大きさで、突然出現した。
エミリとレイナはくるみにしがみつき体を震わせる
『…なに…これ……すごい』
「瀬呂くん…動ける?」
半分凍った状態で、小刻みに震えながら問いかけるミッドナイトに
瀬呂は
「う…動けるわけないでしょ…
い、いてぇ……」
と呟く。
「瀬呂くん、行動不能!
轟くん、二回戦進出!」
圧倒的力の差に、周囲は唖然としたまま
どこかから湧き上がった「ドンマーイ」のコールに会場は包まれた。
轟はバツが悪そうに、瀬呂に近づくと左手を押し当て熱で氷を溶かす。
「……すまねぇ、やりすぎた…
…イラついてた」
どこか寂しげなその表情にくるみは胸元で両手をギュッと握りしめた。