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【ヒロアカ】アイアム!【オメガバ】

第7章 I am having fun





皮首輪の少しだけ先で轟の唇は接近をやめた


「…悪りぃ……」

『こっちこそ…っごめ…ん
もしかしたら、ピルが効いてないのかも…』

体を離した轟は、俯くくるみに「ピル?」と問いかけた。

『うん……フェロモン抑制剤…
今日はまだ発情期(ヒート)じゃないんだけど…それでも微量に分泌しちゃうから…
でも、薬が効きにくくて…』


「そうか…」

たしかに、くるみからは甘く蕩けそうな香りがする。
だが、この想いはただ単にオメガフェロモンに当てられての事なのだらうか?

轟にはその答えを知る術もなく…ただ自分の行動を悔やむばかり。


「緊張してるわけじゃねぇんだが…
さっき、緑谷と話してから、少し気持ちが高ぶってんのかもさんねぇ」

『デクくんと…話したんだ』



「あぁ…、騎馬戦の時、あいつにオールマイトの何かを感じた…近しい何かを…
隠し子かって聞いたら違ぇとは言っていたが…でも無関係でもねぇって感じだった」

『そっか……』



轟はくるみに向き直る。
くるみの瞳は何色かと表現するには色々な色を持ちすぎている。

ヒビの入ったビー玉のように、光を受けるたび色の変わる瞳を見つめると、心が高揚していくのがわかった。


「俺は緑谷に勝つ……見ててくれ」


『うん…見てる!応援してるからね』

くるみは轟の両手を握ると自分の胸元に引き寄せ、祈るようなポーズをとった。


『絶対…轟くんなら大丈夫
絶対、大丈夫だよ』



綺麗に笑うその微笑みに、さっき自分の発した言葉を脳内で復唱していた。


(【運命】のつがい……か…)


手を小さく振りながら観客席に戻っていくくるみを見送り、
轟は控え室へと向かった。

トーナメントの始まりのアナウンスが、狭い廊下に響いていた。
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