第6章 I am so cold
「縫井さん、ゴメンねいきなり」
『あ…うん……』
くるみは、少し人目のある廊下に呼ばれホッとした表情をした。
人目のつかない場所で、オメガ以外と2人っきりになるのはいくら首輪をしていても危険だからだ。
「あの…いきなりこんな事を言って…困らせるのはわかってるけど…
君が、僕の【運命】だと思うんだ…!」
『え…』
その言葉にくるみはピクリと反応する。
【運命】…それは、アルファとオメガの間にのみ起きる特殊現象だ。
一目見ただけで感じ合い、必ず愛し合うことのできる…そんな夢のような現象だが、その確率は天文学的数字で…都市伝説レベルの話
くるみは『あー…』と呟くと首をひねった
「俺…ベータだけど、君を見た瞬間何かゾワっとしたんだ!
体を電気が走るみたいな…、ベータの俺なんかじゃダメだと思うけど…それでも、僕は君が運命だった思うんだよ!」
くるみは困った顔のまま、頭を深く下げる。
『ごめんなさい…
ベータとか、アルファとか関係なくて…
好きな人がいるの……だから、あなたの運命じゃないと思う…』
「そ…っかぁ……
じゃあその人が、縫井さんの運命…ってこと?」
男は断られる事を分かっていたように、だが傷ついた顔をすると、そう聞き返してくる。
だがその問いに、くるみはゆっくりと首を横に振った。
『多分…違うと思う……
この気持ちは、一方的な想いだから
でも…、いつか、好きになってもらえるように頑張るんだ!
あの人以外、好きになれないって思うから』
そこまではっきり言われると、男子生徒は乾いた笑顔で頭をかいた
「そっか…、うん…わかった
ゴメンね、いきなりこんな話しして」