第1章 I am loving you
『七松中学から来ました縫井くるみです
個性は【ぬいぐるみ】です。よろしくお願いします』
簡単な自己紹介の場が設けられ、皆口々に自分の個性を発表していく
何人かはヒーロー科の試験会場でくるみと顔を合わせたことがある者も居た。
ヒーロー科には届かず…だが夢も諦めれなくて普通科落ちする。というのはこの学校ではよくある話だ。
ベータの多い普通科クラスの男子が、くるみの首輪を指差してヒソヒソと話す。
この歳で発情期を迎えた後のオメガはまだ少なく、やけに色っぽくさらに外見も整ったくるみに男子は見惚れて、頬を染めた。
くるみたちが入学初日のガイダンスを受けていると、窓の外がやけに喧しい。
校庭を見ると、何人かの生徒が校庭に体操着で集まって何かをしている様子。
「チッ…ヒーロー科かよ」
「入学初日から個性把握テストだってさ、お忙しいこって」
『個性把握…テスト?』
首を傾げて隣の男子に聞くと、見つめられた男子生徒は頬を赤らめてくるみに答える。
「体力測定の、個性使っていいバージョンらしい
雄英ヒーロー科の通過儀礼って噂では聞いてたけど…」
『そうなんだ…』
くるみの視線は、途中からとっくに男子生徒を離れて、窓の外に見える薄い金髪に注がれる。
今まさに、両手を背中の後ろに突き出して徒競走のレーンを飛んで進む男は
その場の誰よりも目立って見えた。