第5章 I am weak
「…………ぁ?」
小さく声が出たが、周囲のざわつきにそれは搔き消える。
自分の元に来ると思っていたくるみが轟と話をしているのを見ると、胸が焼け付くような気持ち悪さがあった。
(なに話しているのかまるで聞こえねぇ
つか、距離が近かすぎんだろ!)
くるみと轟は、つま先がくっつきそうな距離で話しているのだが、もともと彼女はパーソナルスペースというものが近い。
爆豪に対しても、友人に対しても、誰に対しても話すときは基本至近距離だ。
くるみの後ろに立ってた男がフラついて、くるみの体を押し、
くるみは轟の胸の中にポスッとハマってしまった
爆豪はそれを見て居ても立っても居られなくなったのか、2人に近づこうとしたのだが
轟との距離が2人分ほど近づいたところで、くるみの声が聞こえ
足が止まった…
『轟くん、頑張って優勝してね
応援してるから!』
(んだよ…それ………)
半分野郎が…?優勝?
テメェ、俺のことが散々好きだのなんだの言いやがって、他の男を応援してんのかよ
そう思うとイラつきは止まることを知らず。
黒い感情が体を覆っていく…
爆豪は踵を返して元いた場所に戻り、真っ直ぐに前を向いた。
(優勝は絶対に誰にも渡さねぇ……)
そう固く心に誓うと
開会式を告げるアナウンスが響いた。