第4章 I am hot
『ありがとう!爆豪くんと帰れるなんて夢見たい!』
ミルクに溶けたハチミツみたいに優しく甘く笑うくるみ。
爆豪は握られた手を振りほどくと、
「いいからベタベタすんな!カス」
と吐き捨てて歩いて行く
その後ろを、仔犬よろしく追いかける彼女は頬を緩めて一層締りがない表情をしていた。
爆豪は歩幅を合わせることも速度を緩めることもせず、
時々、くるみは小走りになって距離を詰め、また離れ、また詰めて離れて。
そんなことを繰り返していると、爆豪は
「お せ え!」
と苛立った様子でくるみを睨みつけて二の腕を掴んだ。
「チンタラ歩いてんじゃねぇ」
『ご、ごめん』
とはいえ、自分より20cm以上小さければ歩幅も違うというもので
爆豪はイラだったように舌打ちをすると、少しだけ歩く速度を落とす。
「家どこだ」
『えっと、折寺市なの』
「は?」
(同じかよ……でも中学にこんな奴居なかっただろ)
『爆豪くんは?県内?県外?
私は県外なんだー』
「……折寺だ」
爆豪がそう言うと、くるみはピタリと足を止めた。
『え!?折寺!?折寺なの!?』
「うるせぇ!でけぇ声出すな、叫ぶなバカ女」
『あ、ごめん!でも驚いちゃって』
テトテトと走って距離を詰めると、くるみは嬉しそうに笑った。
「んだよ」
『んーん、家近いの嬉しいなって、それだけ♡』
顔を緩ませて笑うと、どこまでも締まりのない顔つきになるが、最早爆豪の前ではコレがデフォルトであるようにも思える。
筋肉は緩みまくって機能をしていないようだ。
(…犬かよ、こいつ)