第4章 I am hot
二三歩の隙間をあけて、くるみのテンポで道を歩く2人。
微笑ましく見えるその距離感が縮まる事はなく、
一言も交わされることのないままくるみの家まで到着した。
(マジで近けーな…俺とデクんちの間らへんかよ…)
小さなアパートの外装は赤レンガで、窓枠は白く、何処か洋風な造りだ。
そういえばその建物は一年ほど前に工事をしていたような気がする。
『爆豪くん、送ってくれてありがとう』
くるみはちょこんと頭を傾げて笑った。
「てめぇはもうちょっと危機感を持て
あと、俺の周りでウロチョロすんじゃねぇ、何度も言わせんな!」
『え…あ、うん…』
そう爆豪にいわれて、さっきまで笑っていたはずのくるみはしゅん…と肩を垂らす。
耳と尻尾が付いていれば、ダラリと下げているだろう、というあからさまな凹み具合に爆豪はため息を吐いた。
『でも…ね
この間言われて、
なるべく、爆豪くんの周りに行かないようにしてたんだけど…』
オズオズくるみがいえば、爆豪は、「あ゛?」と目を見開く。
言われてみれば確かに、最近姿が見えなくて、イライラして…
上鳴も言っていたはずだ、「最近くるみを見ない」と
今日こうして、くるみと会ってしまったのも、
元はと言えば、「くるみが男と会ってる」と言うことを聞いて
相手の男を見てやろうと、自分から近づいた結果だと気付き…爆豪は、途端に顔が熱くなるのを感じた。
『だからね、これからはもっと気をつけるから…
ごめんね』
理不尽なことを言われていると言うのに、くるみはぎこちなく笑うと小さく手を振ってアパートの中に入っていった。
一方、理不尽なことを言った側の男は
飲み込めない感情に苛立ちながら
数百メートル先の我が家に帰宅したのだった。