第4章 I am hot
「チッ…張り合いねぇな」
舌を打つ爆豪に、くるみはチカチカと瞬きをする。
『ば…爆豪くん…』
やっと絞り出した声で名前を呼ぶと、爆豪はくるみを睨みつけた。
「テメェもちったぁ反撃しろや!」
『ひっ…ご、ごめんなさい…』
「ったく、絡まれてんじゃねぇ。轟と一緒に帰りゃ良かっただろうが」
『…え?
なんで、轟くんと居たの知ってるの…?』
くるみが首を傾げると、爆豪はしまった、という顔をした。
「たまたま、そこで飯食ってたんだよ!
関係ねぇだろ、んなことテメェに」
『……あ…そうだよね、関係ないね…ごめん…』
また、へにゃっと難しそうに笑うくるみに、爆豪の良心がチクリと傷む。
『じゃあ…、その……帰るね…
助けてくれてありがとう』
カバンと空になった紙コップを持って、立ち上がると
くるみの小さな手を爆豪が掴んだ。
『……?』
くるみは頬を赤く染めて爆豪を見つめる
どうして掴まれているのか、分からないという表情で、でもほんの少しの期待も感じているのか、上目遣いに爆豪の言葉を待っている。
繋いだところから、鼓動の速さが移っていく…
爆豪はいつの間にか、こんなに鼓動が高鳴っていることに気づき
なんでこの女を引き止めたのか、後悔し始めていた。
(こんな女…構ってる暇ねぇのに…
何してんだ…俺は…)
「まだその辺にさっきのヤツら居るかもしんねーだろ」
『ぁ……うん…』
「んな首輪付けて1人で帰んな、
襲ってくれって言ってるようなもんじゃねーか
今日は俺が送る」
『え!』
くるみは、信じられないと言った目で爆豪をまじまじと見つめた。
大きな瞳は、キラキラと光って、長い睫毛が瞬きするたびに星をちりばめるようだった。
「あ゛?!文句あるんか!クソ女」
『いや、ない!無いよ!
ただ……好きな人と帰れるなんて…なんか嬉しすぎて…』
くるみは半分泣きそうな顔で爆豪を見上げると、爆豪の手を強く握る。