第4章 I am hot
«『轟くん!大丈夫だよー。
放課後になったら、お話たくさんしようね』»
くるみの声に合わせて、ぬいぐるみは可愛らしく動いた。
まるで、くるみがぬいぐるみになってしまったようで、フッと笑みがこぼれる。
「そうだな」
とだけ返事をすると、ぬいぐるみは«『元気出た?』»と首をかしげた。
「あぁ、ありがとな…」
«『轟くん午後の授業もがんばってね!』»
バイバイー。と手を振って、ぬいぐるみはまた、おすわりの体勢になって動かなくなった。
「とても、可愛らしいですわね」
電話を切った直後、そんな声をかけられて右を向くと
誰もいなかったはずの教室に、八百万が立っていた。
このクラスで唯一話しをする存在。
隣の席で同じ推薦入学者だ。
「でも、轟さんの持ち物らしくはありませんわね」
「もらったんだ」
「そうなんですの?
とても可愛らしいですわ!少し拝見しても?」
八百万は目を輝かせながら、頼んできた。
女ってのは皆んなこういう可愛いものが好きなのか…?
手渡してやると、他の女子生徒も集まって、ぬいぐるみを撫でている。
教室に入ってきた爆豪が、一瞬こちらを見た気がしたが
視線が合うことは無かった。