第4章 I am hot
「誰だ…」
「え?」
「相手は誰だって聞いてんだよ!カス!」
爆豪が静かに唸ると、上鳴はニヤニヤとしながら爆豪に顔を寄せた。
「それが………
わかんなかったんだよ」
「あ???」
「いや、間仕切り?っての?
制服より上が見えなくてさぁ…
俺も急いでたし、悪ぃ★」
「いや、でもやっぱおめー、くるみちゃんの事気になって…ッブヘェ!」
上鳴はその場で顔面を爆破され、伸びきってしまった。
食べ終えた食器を掴むと、爆豪は食堂を後にする……
(今の…くるみに言ったほうがいいな…)
轟も立ち上がり、食堂を後にしたところで
ハタ…と立ち止まる。
「………言わねぇで、良いか…」
何となく、言いたくないと思った
さっきのやり取りを、くるみに知られたくない。
そう思った。
理由はわからないが、言ってしまえば、何かが変わりそうで…。
またチクン…チクン…と痛む胸を押さえて
教室に戻った。
ーーー『寂しくなったらLINEして!』
数日前に、くるみに言われた言葉を思い出す。
これが、「寂しい」という感情なら、連絡していいのだろうか。
一人きりの教室で、机の上に出した小さなクマのぬいぐるみを眺めながら
スマホを握る。
打ち込んだ4文字の言葉は、ポコン。と音を立ててくるみの元へと届いた。
ドキドキと音を立てる心臓。
送った事を、少しだけ後悔した…。
「さみしい」なんて言葉…誰にも使ったことがない。
何と思われるだろうか
返事は来るだろうか。
もう読んだだろうか?
閉じて、机の上に置かれたスマートフォンに手を伸ばすと、
タイミングを計ったかのように、着信音が鳴って
指先がビクッと震えた。
«『もしもし!?轟くん、大丈夫?!』»
受話器から流れてきた声に、胸が溶けそうになる。
«『何かあった?』»
「悪りぃ、前、寂しくなったら連絡していいって言ってたから…」
そう答えると、くるみは
«『あ、そうだったね!』»
と笑いながら返事をしてくれた。
そして、数秒開けて、目の前のくまが「うんしょ」と立ち上がる。