第32章 I am making my mind
『爆豪くん……どっちが好きな方を選んでよ』
「は……?」
『爆豪くんが…ヴィランになってくれたら、弔くんとは番にならない。
ヴィランにならないなら、忘却の個性の人に頼んで私の記憶だけを消して、元の生活に返してあげる。』
「おい…くるみ」
勝手に決めて、選択肢を指折るくるみに
死柄木は苛立った声を出した。
『でも、忘れる場合…【この子】の事も忘れてもらうことになる…』
「この子……?」
くるみはニコリと微笑むと爆豪の手を握っていない方の手で、下腹部を撫でた。
『妊娠、してるの
今、3ヶ月。』
爆豪くんとの子供だよ?とくるみが微笑むと、爆豪の瞳は大きく開いた。
そういえば…と思い出すのは、前回のヒートの前だ。
高体温、吐気、眠気…それらはどれも、妊娠初期によく起こるという体調不良…。
(風邪とかじゃ…なかったってことかよ…)
隠された事実を知り、死柄木は後ずさったが、何も言わず行く末を見守ることにした
『爆豪くんが私たちを忘れても、堕ろしたりしないから安心して。
弔くんと育てるからさ』
くるみは爆豪と握ったままの手を持ち上げ、両手でそっと包み込む
『ねえ、どっちがいい……?』
そう問われて、爆豪は目眩がした。
上も下も、右も左も分からない。
糸で吊るされてブンブン回されているような気分だった。
どうしたい?
それを俺が決めんのかよ…
コイツを忘れるか、コイツのそばにいるか…
「俺は……」
俺で…
俺が……
俺の…
俺の……子供が、居んのかよ…