第31章 I am nothing
緑谷は人差し指を口元に寄せると、ドアに沿って耳を這わせた。
「ーーーヴィラン連合の1人、コンプレス…本名、迫圧紘(さこ あつひろ)が大阪で目撃されています」
「コンプレス…あの仮面と目出し帽の男か。
彼であれば、顔が割れていないと思っての外出…ヴィラン連合も甘いな…潜伏先は?」
「現時点ではまだ何とも…ですが、出没地近辺の廃ビルや廃工場をくまなく調べて居りますから、見つかるのも時間の問題でしょう…」
「爆豪少年の安否は…?」
「それも…まだ未確認です…
拉致から既に1週間が経っている…一刻も早く安否を確認したいところではあるんだが」
塚内が重くこたえると、オールマイトの「むぅ……」という苦しげな唸り声がドア越しに響いた。
と、そこに電話の着信音が鳴り響き、塚内がそれを取る。
「はい、塚内です……何?追圧が監視カメラに写った…!?」
「!?」
「!!」
轟と緑谷は顔を見合わせ、さらに耳をそばだてる
「大阪区…江洲羽市…」
緑谷の唾を飲む音が、静かな廊下に響いた