第31章 I am nothing
「縫井くるみ。
名前以外は全部嘘っぱちの情報だったよ
住所、卒業中学、戸籍、個性に至るまで全部な……
父親は一年前に行方不明。
その直前に強姦事件で会社はクビ。
本人は否認を続けてたっつーんだから、嵌められたのかもな…。」
机の上に並べられた捜査資料の写真の一枚を、轟は手に取った。
黒いセーラー服に身を包んだくるみ。
アジトのあったバーに、人目を気にするように入って行くところの写真だ。
「それは、近くの防犯カメラに残ってたもんだな。頻繁に出入り、どころじゃねぇ。
そこに住んでたって感じだろ」
「緑谷からクラスの個性情報を抜き出して
爆豪、轟に渡したぬいぐるみ型のストラップが発信機となって、情報は筒抜け…
可愛い顔して、とんだ悪党だよなァ。」
「じゃあUSJの時は?まだ入学して間もなかったじゃない
どこから情報が流れてたの?」
捜査資料から目を上げたミッドナイトが問いかけると、轟は目を伏せて呟いた。
「俺に……オールマイトの授業予定を聞いてきました…」
「セキュリティの防除なども、内部からならできないことはない。
縫井は四肢のあるものならなんでも操れるから、本人のアリバイはそのままに犯行に移すのも、朝飯前だろう」
相澤の言葉に、轟はダンッ!と机を叩いた。