第30章 I am talking about our past 2
『これは……?』
「雄英の願書だ。君のものも、こちらで手配した中学から出す予定だが、それはいい」
手に取った願書のコピーには、写真が貼られていて、くるみはその写真をまじまじと見つめた後、オールフォーワンへと視線を戻す。
「その男に近づくんだ」
『こいつに…?なんで?』
「ヘドロ事件、知っているだろう?あの時の男だ」
ヘドロ事件…と聞いて、くるみは納得した。
つい先週、静岡で起きた事件だったが、確か同い年の男の子が人質に取られ、爆発の個性で抵抗を見せた。
そのタフネスさ、巨悪な物言い、個性の強さを見て、弔くんが呟いたのだ
「いいなぁ……コイツ、欲しいなぁ」
くるみは死柄木の膝の上で、猫可愛がりされていてテレビの画面はチラリとしか見なかったのだが、なるほど。この男が弔くんが欲しがっていた男か、と理解する。
「この爆豪くんというのは、調べたところ、面白くてね……。
アルファだと思い込んでいるベータなんだよ」
『何でそんなことまで知ってるの』
「私の主治医が、彼の町医者でねぇ
いい物件だろ?
プライドも高い……アルファらしい強個性だ」
『オメガの私が近づいて、ベータだってわかった所を、堕とせばいいのね…』
「君は実に頭がいい……
話していてとても楽だよ」
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『その後、私は受験に合格。
ヒーロー科をわざと落ちて、普通科を選んだのは、内通者ってバレないようにするためだった。
オメガのフェロモンは利用価値が高いから、入学式の少し前に、ヒート促進剤を打つことにしたの。』
「でもさ、でもさ、くるみちゃんは頭もいいし、強個性なんだから、
そもそもヒーローになりたいって思わなかったの??」
トガが尋ねるとくるみはとんでもない、と言いたげに目を見開いた。
『やだ、ヒーローになりたいなんて、
それこそ『普通』すぎる。
それに、好きな人のそばに居たい
役に立ちたい。同じようになりたい…
トガちゃんなら分かってくれるでしょ?』
「分かります!
好きな人に近付きたくて…同じもの身につけたり、その人ならどう行動するかなって考えたり、しちゃうよね!」