第29章 I am talking about our past
母の温もりさえも知らない死柄木にとって、
初めてきちんと触れる女の体だった
淀みなく溢れ出る愛液の、甘い香りにクラクラと目眩がする…
まだヒート前だったくるみ。
オメガがフェロモンを撒き散らすようになるのはヒート後だ。
この時まだ、死柄木は自身がアルファであることも、くるみがオメガであることも知らなかったのだが、
体が勝手にそうさせたのだろう…。
【噛みたい】
死柄木はくるみのことを噛みたいと思った
お腹が空いて食事をしたいと思うように
疲れ果てて眠りたいと思うように
それと同じような衝動で
首筋に噛み付きたいと思ったのだ。
くるみの体を反転させ、背後から前方に回した指で、クリトリスを嬲りながら首筋にを鼻先で探る。
キャラメル色の髪の束がサラサラと首元から退け、 真っ白な首筋が現れる。
陶器のような肌は聖域と呼ばれるにふさわしい美しさだった…
(噛みたい…噛みたい噛みたい噛みたい噛みたい噛みたい噛みたい噛みたい噛みたい噛みたい噛みたい噛みたい噛みたい噛みたい噛みたいカミタイ)
目が血走り、身体の血液が一斉に流れ始める。
ドクンドクンとうねりながら、
体の中心部をさらに熱くさせた…。
『あぁ…♡んっ♡はぁっ♡』
死柄木は息を荒くしながら喉元を4指で引き上げ
首筋を自分の方に近寄せる
そして、鋭さを増した歯で、
深く…噛み付いた。
噛まれたと同時にくるみは痛みの中果てた。
声にならぬ声をあげて、
体を大きくエビのように反らせての絶頂
安っぽいベッドのシーツに次第にできる水溜り
死柄木は未だ、首筋に噛み付いたまま、吸血鬼のようにうっすらと浮かんだ血を吸い続けていた。
「……くるみ」
『弔くん…』
視線が絡み、そのまま四つ這いの体制のくるみに
自身の陰茎を押し付ける。
「うぁ……熱っ……何だよこれ…」
死柄木はその身を沈めた途端、小さく喘いだ。
それはくるみも同じで、脳を満たす幸福に、下腹部に感じるはずの破膜の痛みさえ感じなかった。
『弔くん…中…はいってる…』