第27章 l am a hero
「そいつに触んな……そいつは…」
「君の大切な運命なんだろ?なら守ってやらなきゃなぁ?」
くるみはガチガチと歯を震わせながら涙を目に溜める。
助けを求める視線に、爆豪は死柄木を睨みつけた。
「脅しても意味はねぇぞ…」
「…別に脅してるわけじゃない、これは「話し合い」だよ」
そう言ったところで、死柄木は「あぁ」と思い出したように呟いてくるみの首元から手を離した
くるみは咳き込みながら床に伏す
死柄木の手を離れたことで、一旦は安堵した爆豪だったが、拘束されている身では、くるみを連れてここから逃げ出す算段がたたない。
「なら、一晩考えるといい…ヴィラン連合に入ってくれれば、この女の命は保証する…
何がお前にとって大事か…よく考えるんだな…」
死柄木に促されるまま、黒霧以外のヴィラン達はBARの奥スペースに姿を消した。
誰もいなくなった店内で、くるみは爆豪に這い寄り、抱きしめる。
『爆豪くん…』
「悪ぃ…俺のせいで、お前が狙われた…」
『いいの…それより、無事でよかった……』
爆豪は腕を拘束されているが故に、くるみを抱きしめ返せないことに焦燥感を覚える。
「大丈夫だ…俺は……
くるみは、アイツらに、何もされてねぇか?」
『うん…大丈夫、どこも痛くないよ?
薬で眠ってたみたいで…よく分からないけど…』
その返事に、爆豪はホッとした表情を見せる。
すぐ側に、黒霧が居るせいで、大きな声では言えないが、抱きしめられた状態で、耳元にそっと声を流し込んだ。
「(…どうにかしてここから逃げんぞ)」
『(そんな……無理だよ
相手は10人くらいいるんだよ?
今は大人しく従ってた方が……)』
「(俺はぜってぇヴィランにはならねぇ…)」
『(………)』
「(言っただろ、俺はお前を守るヒーローになるって…)」
くるみは静かにうなづいた。
爆豪は、安心しろと付け足して、コツンとくるみの額に額を重ねる。
黒霧の監視の中…長い夜は過ぎていった。