第26章 I am a ○○
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林の中を進む緑谷一行。
その最後尾を歩くのは常闇と爆豪。
爆豪の表情は暗い。
(あのぬいぐるみ……どう考えたってくるみのだ)
見間違える訳がない。
守られるべきは自分ではなくくるみだ。
なのに、どうして自分は今、呑気に野郎に囲まれて歩いているんだ。
己の非力さに悶々としていた爆豪の目端に黒いモヤが現れて、思わず立ち止まる。
すぐ隣を歩いていた常闇も気付いたようで、前方を歩く緑谷たちに知らせようと口を開いた。
「みっ――」
だが爆豪にくちばしを握られてしまい、声を出すことは出来なかった。
何を考えている、と驚く常闇に爆豪は複雑な顔を見せる。
くるみが人質にとられている可能性があるのだ。
何よりも大事なのはくるみ…
自分の身の安全よりも彼女の安否が気になる。
常闇には申し訳無いが、今ここで声を上げさせる訳にはいかない。
「爆豪勝己」
「……」
そっと黒霧が話しかける。
ズズズ、空間がひしゃげた音がした。爆豪が顔を上げれば、頭上、夜空を塞ぐようにしてモヤがもう一つ現れた。
その中に見えたのは、
「この女が大事だろ?話がしたいんだけなんだよ…爆豪くん、大人しく捕まってくれるよな?」
意識が無いのか、目を伏せてぐったりとするくるみと、その首を掴んで不敵に嗤う死柄木だった。
愕然とする爆豪。
右手で掴んだ常闇が首を横に振る。
見ると、『やめろ、思い止まれ』そう訴えかけるような瞳と目が合った。