第26章 I am a ○○
「…ハァ……すまん、助けられた…」
「…黒モヤの奴…逃げやがった…!
テメェ轟!…もし、くるみになんかあったら…どうすんだ!あ゛!?」
「なんで縫井さん…?」
状況を知らない緑谷が朦朧とした意識の中呟く
その問いかけに答えない爆豪の代わりに、轟が悔しげに顔を歪めながら声を絞り出した。
「…さっき、黒霧がくるみのキーホルダーを見せてきた」
「キーホルダー…?」
「これと同じやつだ」
轟はポケットから、さっき黒霧が持っていたものとよく似たピンクのぬいぐるみを取り出す。
「罠じゃないのか?そんなようなキーホルダーなら、似たものをよく見かけるが…」
フォローのつもりで声を出した常闇に爆豪は突っかかった。
「ちげぇんだよ……!
あいつのアレは、んな見分けがつかねぇもんと違ぇ……!!」
「かっちゃん……」
こういう時こそ、逆に冷静なはずの爆豪が
ここまで焦っていることに、緑谷は驚いていた。
彼女が爆豪にとってどれほど大切なのか、爆豪の苛立ち具合で伝わってくる…
「とにかく、敵の狙いはかっちゃんだ…
ブラド先生と相澤先生の居る小屋に向かうのが一番安全だよ」
「オイ」
「なるほど…我は後方を守ればいいのか」
「オイ!」
がなる爆豪を置いて、緑谷たちはどんどん話を進めていく。
「正直このメンツなら、オールマイトだって怖くないんじゃないかな」
「俺を守るんじゃねぇ!!」
ヴィランの標的である爆豪を中心で守りつつ目的地まで進んでいくことに決まり、
話し合いの末に爆豪の悪態が虚しく響いた。