第26章 I am a ○○
「相当場数踏んでやがる」
背後に目をやれば空気を濁すガス溜まり。
周囲を取り囲む木々のせいで、軽々しく炎も爆破も使う事はできない。
これは背水の陣なんて生易しいものじゃない。
(分かりやすく縛り掛けられてんな……)
「最大火力でぶっ放す!!」
焦れた爆豪が吼える。
「木が燃えても速攻、氷で覆え!」
「ダメだ!爆破じゃ煙で視界が塞がれてこっちの部が悪りぃ!」
なにか打開策はないかと、飛び交う怒号。
今は、アルファだベータだ、どっちが上だ下だ、恋敵だなんだの確執はどうでもいい
目の前の強敵を倒す。それだけだ。
「クソがぁああああ!!」
にっちもさっちもいかない状況に爆豪が吠えたその時、ムーンフィッシュと自分たちを隔てるように黒いモヤの渦が現れた。
ワープゲート…黒霧…
「てめぇ! USJん時の!」
黒霧は闇夜に浮かびながら徐々に姿を現す
「随分と苦戦されているようですね…爆豪勝己」
「!」
モヤをゆらゆらと揺らし、黒霧は落ち着いた口調で話しかけてくる。
「完全なる相手が格上、これ以上戦っても無意味だと思われますが」
「ンだてめぇ、何が言いてぇ」
「我々の目的は貴方…なるべく傷を付けず、穏便に済ませたいだけですよ」
「意味分かんねぇわクソが……」
会話にならないと踏んだ黒霧は、呆れるように肩をすくめるとゴソゴソと体を動かした。
「仕方ありませんね…
では、これを見てもまだ抵抗されますか?」
男は、黒いモヤの手をポケットに突っ込むと、ゆっくりと何か小さな物を取り出す