第26章 I am a ○○
「なぁ、爆豪」
「話しかけんな、横槍野郎」
話しかけてきた轟を睨みつけることもせず、爆豪は先を急ぐ
「なんで、くるみと番にならねぇんだ」
「……」
「お前は、くるみのこと、本気で好きだろ」
「テメェに話す筋合いはねぇ…
いいから黙って進め。」
轟は、爆豪の背中を見つめる。
「くるみは、いっつもお前の事ばっかり話してた…
お前に酷いことを言われても、振られても…
お前のことしか見ちゃいねぇ」
「……」
「くるみに愛されてる爆豪が」
羨ましいんだ、そんな轟の言葉は爆発音に掻き消された。
焦げ臭い香りに顔を上げれば、爆豪が殴りつけた木の幹からブスブスと煙が上がっている。
「いい加減黙れ…」
「……」
苦しそうに歯軋りする爆豪の横顔を見つめていた轟は顔を顰めた。
焦げた木の香りとは別に、鼻につく嫌な臭い。
「……なぁ、この匂い…!」
「ガス…?!」
「吸い込むな!」
目の前を漂う、充満する紫色の煙……
二人が気付いた時には、それは既に足元まで差し迫っていて……
1本の道だけを残し、他の逃げ道は塞がれていた