第25章 I am your love
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緑谷達が魔獣の森を抜けた頃、
爆豪のいなくなった部屋で一人、くるみはテレビをつけたまま眠りについていた。
やけに静かな部屋に、ニュースを読み上げる男性の声が響く。
どこか遠くで、赤子の泣き声が響いた。
そんな奇妙な静けさの中、部屋の片隅にもぞもぞと蠢く、黒いモヤ
次第に大きさを増していくその穴の内から、男は、低く、呟く。
「お迎えにあがりましたよ…くるみさん…」
くるみの足元まで侵略していくその黒い沼のような穴は
音もなく、ズブズブとくるみの体を飲み込んでいく。
くるみの頭が飲み込まれたところで、
その影は完全に形を消した。
ニュースを読み上げる男の声だけ、
狭い部屋の中で、淡々と響き続けていた。