第25章 I am your love
座り直したかっちゃんのポケットに揺れるクマのぬいぐるみ。
その形状は縫井さんと轟くんのバッグについているものと同じだ。
「上手くいってるんだね」
「あ?」
僕はそのぬいぐるみを指さした。
「だってほら、それ縫井さんが作ってくれたんでしょ?」
たぶん、かっちゃんと会話ができていることが嬉しかったんだと思う。
今まで顔を合わせば、いがみ合ってばかりの僕ら
いつからマトモに話してないか記憶もない。
浮かれてたんだ
僕は。
「あぁ…自分だと思ってずっと持っててほしいんだと…
あいつ、どこにいるかわからねぇから不安だなんだ言ってやがった」
面倒くさそうにぬいぐるみをつっつくかっちゃんだったけど、僕から見れば、どこからどう見ても嬉しそうで、思わず緩む頬をどうにか抑えて前を向いた。
「そうだろうね…
僕たちは、あんまりにもヴィランに遭遇しすぎた、心配されても仕方ないよ
この間も
ショッピングモールでね、死柄木にちょっと…
あ、でも、かっちゃんは縫井さんと買い物だったっけ?」
「なんでテメェが知ってんだよ」
「い、いや、縫井さんから聞いてて…」
かっちゃんの睨んでくる目が本気で、僕焦って弁解する。
「チッ……
俺もいたんだよ、その現場のすぐ近くに
ちょうどヴィランが現れたくれぇにあいつがヒートきたから…見てはいねぇが」
かっちゃんはそう言って押し黙った。
その横顔が少し悲しそうに見えて、なんて声をかけようか悩んでいると、ゆっくりと揺れてバスが止まった