第24章 I am dating with you
15分もすれば、抑制剤の効果は切れ、くるみの体温はまた上がっていく。
『あ…っんぁ…♡』
小さく悶えるくるみは苦悩の表情を浮かべて、まだ意識が曖昧だ。
「可哀想に…
この道を抜ければ、割と進めるはずだから…」
運転手は、くるみに同情の目を向け、ハンドルを強く握りしめた。
「ヒート抑制剤も、実際問題なく効く人は半分ってなもんでねぇ
実際は、吐き気、目眩、頭痛に高熱…
言葉もほとんど出てこないし、犬みたいに唸ることしかできないねぇ…」
「…そんなに、辛れぇのか…」
運転手の言うとおり、その道を抜けると一気に進み始め、10分足らずでくるみの家に到着した。
車を降りると、運転手は窓を開けて爆豪に声をかける。
「オメガに必要なのは…アルファじゃない
愛する人、なんだよ。
だから、お兄さんも恥じることは無い…彼女への愛は、彼女を救うさ」
頭を軽く下げると、運転手はアクセルをゆっくり踏んで去っていった。
爆豪は、くるみをすぐに部屋の前に運ぶと、くるみのバッグから鍵を取り出し、錠を開ける。
その時カバンから、ポテッと落ちたぬいぐるみが足先に触れた。
「これ……」
爆豪はソレを拾い上げ、くるみをベッドに下ろす。
『ん……ばくご…く……』
「くるみ、目ぇ覚めたかよ」
『それ……』
くるみの焦点のあっていない目は、爆豪の手元を見つめている。
「あぁ、お前のバッグから落ちた。」
ぬいぐるみを差し出してくる爆豪に、くるみは手を押し返して、爆豪にぬいぐるみを押し付けた。
『……それ、爆豪くんに、作った…の…』
「俺に?」
『合宿、離れ離れ、なる…から……』
爆豪は手元のクマのぬいぐるみを見つめた、手のひらサイズのぬいぐるみは、ボールチェーンが付いていてキーホルダーになるようだ。
黒い布に地赤い目、胸元がオレンジ色のバツ印。
爆豪のヒーローコスチュームをモチーフにしているようなデザインだ。