第24章 I am dating with you
くるみが列の最後尾に並ぼうとしたが、爆豪はその肩を掴んで、店の入り口に向かおうとする。
『え…ばくご、くん?ちょ…並ばなきゃ』
爆豪がくるみを連れて店内に入ると、店員が笑顔で迎える。
「予約の爆豪です」
「お待ちしておりました、どうぞこちらへ」
シレッとした顔で店員についていこうとする爆豪の腕の中で、くるみは驚いた様子で爆豪を見上げる。
「んだよ」
『え…あ……予約、してくれてたんだ』
「すんだろ」
くるみはパッと顔を輝かせて店員の案内してくれた席に座った。
モールの二階になっているテラス席にからは、入り口のオブジェがよく見える。
『風、気持ちいいね』
「そーだな」
涼しいそよ風が吹くたびにふわり持ち上がる髪の束に、爆豪はそっと視線を向ける。
嘘みたいに穏やかな日常の中、
水位を下げていくアイスティー。
取り留めのない会話が交わされる、日曜の昼下がり
ふと、下を見れば、電気屋前に立ち並ぶ大型液晶TVの前に、子供たちが群がって歓声を上げている。
テレビの中のヒーローに向けられる視線は、昔、自分が幼かった頃、オールマイトに向けていたソレと同じだ。
あの頃…
ただ、オールマイトの勝つ姿に憧れてヒーローを目指していた俺。
そこに深い信念や、理由はなく、ただ勝ちに固執していただけだった…
絶対負けないヒーローになる。
それが、理想で、夢で、目標だった。
「お前に出会って…
俺が変わったって、デクのやつが言いやがった…」
突然投げかけられた一言に、くるみは目をあげる。
その瞳は光を反射しながら爆豪を見つめた。
「変わるはずがねぇと思った
けどな、
気づかねぇうちに、変わってたのかもしんねぇ」
『ばくご…くん?』
机の上に置かれている、くるみの小さな手を、爆豪がそっと握る。
「勝つコトだけに固執していた俺が
今、くるみとのこんな、なんでもねぇ日常を守りてぇがために、
ヒーローになりてぇなんて思ってる…」
そっと風が吹いて、緑の香りが香る
くるみの瞳が揺れて、その体温がまた少し上がった気がした。