第3章 I am general course
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「体育祭まで2週間切った、ヒーロー科への編入申し込みがあるやつは後で職員室に来い」
担任の声掛けに、1-C組の教室内はざわついた。
編入希望届を提出すれば、体育祭のリザルト次第でヒーロー科に編入も夢じゃない…。そのシステムはヒーロー科に落ち、普通科に通う生徒に告げられた謂わば一筋の希望の光。
「一応出すけど…例年一次通過者は42人までだし
40人がヒーロー科ってことはさ、普通科枠なんて2なんだろ?無理じゃね?」
「だよなー」
「でも所詮俺、ベータだしなー」
「俺も、ベータだぜ?なんだかんだ言っても、ヒーロー科はほとんどアルファらしい」
ほとんどが諦めの声の中、エミリはくるみに肩を寄せてヒソヒソと声をかける。
「ね、くるみはどうするの?」
『うーん…難しい…ってわかってるけど
やっぱり、編入申請だけでも出しておこうかな…って』
「やっぱそうかー、わたしも出すだけ出してみようかなー
レイナはどうするの?」
「んー?わたしはいいやー、どうせ一次落第だしー」
レイナが雄英を受けた理由に「玉の輿あわよくば乗れるかなーって♡」と言っていたのをエミリは思い出した。
自分もヒーローになりたいとは思っているけれど、ヒーロー科に入れる可能性はほぼ諦めている。だが、目の前のくるみは、決して諦めていなさそうな瞳をしている。
劣勢のオメガであるはずの彼女は、このクラスの中の誰よりもキラキラと、なりたいものに真っ直ぐで
見ていてとても眩しかった。
対して、エミリの斜め前の男…心操人使は、グダっ…と闇に曇った眼でこちらを横目に見ている。
たしか、アルファの上に洗脳…という強個性を持っていたはずだ。この見た目で、その個性で、ヒーロー志望なのだというから面白い。
「なに?」
エミリは思い切って心操に声をかける。
「いや…そこのさ、縫井さんって、ヒーロー科の爆豪が好きなんだろ」
『え…あ、うん…』
くるみは突然話を振られて驚いたのか、頬杖をついていた手元から頬を離して心操に答えた。