第3章 I am general course
『…轟くん?』
くるみに名前を呼ばれて、パッと手を離した
視界の奥で爆豪が校内に消えていくのが見えて、どこかホッとしている自分に心の中で首を捻る。
「悪りぃ」
『ううん、大丈夫
でも、どうかしたの?』
「分からねぇ……でも、行ってほしくねぇ」
轟は何とも形容しがたい心の内を、思いのままに呟くと
くるみは、うん…と少し悩んでカバンの中を探りはじめた。
『はい!これあげる』
物を差し出され自然に受け取ってしまった手のひら
柔らかな感触に視線を落とすと、轟の手の中には小さなクマのぬいぐるみが置かれている。
「……これ」
『えへへ、お揃いっ』
くるみはカバンをチラッと見せると、そこには轟に渡されたぬいぐるみと同じもののキーホルダーが付いていた。
『この子がそばにいるから、大丈夫!寂しくないよ』
くるみはまるで子供にするように、轟の頭をポンポン、と撫でて笑う。
『それに、ね。ほら!』
くるみが手をかざすとクマのぬいぐるみは、轟の手の上で、うんしょ…と立ち上がり手を振った。
『これが個性なんだ…地味でしょ?
でも1キロ圏内なら動かせるから、寂しくなったらLINEして?
くまちゃんが励ましてくれるから』
コロコロと笑うくるみに轟は、胸を締め付けられる痛みにまた襲われた。
(……また、この痛みだ)
柔らかく、毛糸で心臓を縛ったような痛み…
痛いはずなのに心地いい。
「あぁ…ありがとな」
礼を告げると、くるみは嬉しげに笑った。