第23章 I am a winner
伸びてきた手は、胸ぐらを掴かんできた。
「どこまで見た…」
「は…え…っと……」
「アイツの身体見たんじゃねぇだろうな…」
「あ!いや!!それは見てない…です……」
本当のことを言うと、谷間は見ちゃったんだけど……
あれはギリギリセーフだと、口を紡ぐ。
かっちゃんはジッと僕の目の中を見つめたあと
しばらくして
「……ならいい」
そう言って手を離し、目の前のベッドに向かい合うようにどかっと座った。
僕は掴まれたヒーロースーツのシワを整えながら、ベッドの上で正座をする。
なんで正座をしたかと言うと、かっちゃんの雰囲気的に、まだ話が続きそうだと思ったから
「…どこまで見た」
「どこまでって…えっと……」
「首輪、外してんの見ただろうが」
「う……」
僕は観念して静かに頷いた。
かっちゃんはため息を吐いて、足を組む。
「ごめん……でも…もしかしてかっちゃん…君…ベータなの?…」
「あぁ」
顔を上げると、かっちゃんと目が合った。
「…ごめん…僕、君に酷いことを……」
「テメェになに言われようが何も変わらねぇ」
「…でも」
「とにかく、俺がベータだってことは誰にも言うな」
かっちゃんに睨みつけられ、僕はまた体を小さくした。
「言わないよ…でも君は強個性だし、実力がすごいんだ…
べつにベータでも、誰も見下したりはしない……」
「あ゛?」
怒りに触れてしまったのか、かっちゃんの手のひらから小さな爆発が起きる。
「んな事で黙ってろって言ってんじゃねぇわ、クソカスが
俺がベータだって分かったら、くるみに言い寄ってくるアルファが増えんだろうが」
「そっ…か…」
かっちゃんはもう一度「絶対言うなよ、特に半分野郎に」と念を押して
保健室から出て行った。
一人になった保健室の中で、僕はやっと一息つくことができた。
かっちゃんがベータ
かっちゃんがベータ
想像できないけれど真実らしい。
(でも……かっちゃんも本気なら
よかった…のかな)
縫井さんのことを思うと、やっぱりお母さんと重なった。