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【ヒロアカ】アイアム!【オメガバ】

第23章 I am a winner


思考が一時停止する。
いやいやいや、ないないない…。って頭は否定しているのに、突きつけられた証拠が、かっちゃんがアルファでは無いと教えてくる。

まさかあのかっちゃんが。
そう思うが、かっちゃんがアルファでないならいろんな説明もつく。

どっからどう見ても好き同士な縫井さんと番いにならないこととか
さっきの試験中にアルファに勝つって発言していたこととか…


でも、かっちゃんがベータやオメガだなんて想像もできなくて…。

両手で口元を押さえて息を殺した。

「くっ…ァ…!」
かっちゃんの唸るような声とともに、布が擦れた音がする。

(終わっ…たの…かな…)

『…落ち着いた?』

縫井さんが優しい声でかっちゃんに話しかける。

「あぁ…」
『ならよかった

教室に荷物あるから戻っておくね?』

「……先帰っとけ」

『わかった』

程なくして、縫井さんが保健室から出ていく音が聞こえて、保健室は再度静まり返った。


未だドキドキしてる心臓を抑えるように静かに息をつく。
未だ脳裏に残る縫井さんの首元の噛み跡……



(やっぱり…かっちゃんは縫井さんのこと、本気で好きなんだ…)

そう思うと、心がじんわりあったかくなった…。
けれど、同時に青ざめる

番いたいのに、番ないのだとしたら

どれほど辛いだろう。

愛する人が、目の前で苦しんでいても、助けられない。

愛する人が、他の誰か(アルファ)に奪われる恐怖に怯えなくてはいけない。


想像するだけでゾッとした。



なのに…僕はなんて事を……
事情も知らず、かっちゃんを非道だと罵った…



(最低なのは…僕の方じゃないか……)

涙が溢れ出て、止まらない。
声を押し殺して涙を流す……





と、その時だった。
ジャっ!とプラスチックと金属が擦れる音がして、
カーテンが開いた



「……おい、クソ覗き魔」



「……かっちゃ……ん」


見下ろす瞳はさっきまでの、縫井さんを見ていた優しいものではなくて…

冷静な怒りを孕んだ瞳に僕は、震えることしかできなかったんだ…


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